お盆明けからそのチカラを失った太平洋高気圧は、その後復活することはなく、
8月後半には秋雨前線がしっかりと腰を据えた日本列島。
行く夏を惜しむ間もなく、今日9月8日は「白露」。
熱帯夜もすっかり過去のこととなり、早朝の草花には露が宿る季節となりました。
そして明日は、
「菊の節句」。
ものの本によれば、もともとは五節句「重陽」のことであり、
陰陽思想における陽の数(奇数)の極み「九」が重なる日ということで、
めでたい日とされてきたとのこと。
しかしながら、桃の節句、端午の節句、そして七夕に比べると、
最近の「菊の節句」というのは、祝いの日としての存在感がなくなっているようで、
この日を祝う! という風景を一般にはあまり見かけなくなっています。
「菊」という花の持つイメージの影響かもしれませんし、
新暦の9月9日といえば、まだまだ残暑厳しく、
「秋」を感じるには少し早すぎるせいかもしれません。
と、想定外に長くなった季節のお話しはこれくらいにして本日の本題。
(本題も若干季節の話題ではありますが…)
食欲の秋! とか、スポーツの秋! とか、
芸術の秋! とか、ほにゃららの秋! とかいう風に
秋という季節には
さまざまな○○○が付けられます。
そして中でもアカデミックなものの代表は、「読書の秋」ではないでしょうか。
秋の夜長に読書に耽る、などというと、
何となく知能指数の高い方の高尚な過ごし方のように聞こえて、
少々こそばゆい気がするのですが
エアコンも不要となった時期に、虫の声をBGMにして
日頃は読まない古典などに触れてみるのは、決して悪いことではないでしょう。
いつの頃からか、出版社のキャンペーンは夏休みに集中しているようですが、
お笑い芸人さんの小説が芥川賞を獲得して盛り上がる今年こそ、
「読書の秋」復権運動を起こすべきではないか! などと思いつつ…
しかしながら、世はデジタルデバイスの時代ですから、
秋の夜といえども若い方々が手にしているのは、スマホかタブレット。
そして今どきの秋の夜長を、決定的に読書から遠ざける切り札として
はるばる海を渡ってきたのが、ご存じ
「ネットフリックス」。
全世界50ヶ国以上で約6500万人の会員を有する有料動画配信最大手として、
「有料放送」がなかなか根付かないこの国へ、敢然と挑戦を仕掛けるべく、
9月2日よりサービスを開始したことは既に多くのマスコミにも取り上げられており、
その動向を注視しておられる方も多いはず。
というか、すでにご契約されてそのコンテンツを楽しんでいらっしゃる方も…。
動画=テレビ=無料 という「思い込み」が、まだまだ普通のこの国では、
WOWOW(BS)やスカパー(CS)といった
地上波とは異なるさまざまな専門チャネルを擁した衛星放送も、
なかなか広がり感に欠けるのが実状。
(しかし、最も古い放送のNHKは有料ではないか! と思うのですが…)
また、2011年に先兵として壁に挑んだ「HULU」は、あえなく撃沈の道を辿り、
昨年(2014年)に日本テレビ放送網に事業売却されてしまいました。
(今回のネットフリックス上陸で息を吹き返す可能性はありますね)
そんなこの国で、ネットフリックスのCEOは、
「7年間で1000万世帯の会員獲得を目指す!」とぶち上げた。(らしい…)
ここで注目したいのは、その単位が「人」ではなく「世帯」であるというところ。
これには本気で「お茶の間」を征服しようという意図が見て取れます。
つまり、スマホやタブレットはあくまで「子機」のようなものであって、
目指す本丸は、「親機」としてリビングに鎮座する「テレビ」であるわけです。
かつて数多くの欧米のチャレンジャーが、
「黒船」などと呼ばれながらもこの国の習慣に挑んできました。
自動車や家電製品、日用品に携帯電話。マクドナルドやKFCといった外食チェーン。
カルフールやテスコといった小売業も「うまくいくはず」だった…。
しかし、多くの企業がその壁を破ることができずに撤退したことも記憶に新しい。
(定着したかに見えるマックですら、大苦戦が続いています)
さてそんな中で、満を持して上陸を果たしたネットフリックス。
単なる動画配信というサービスだけでなく、独自コンテンツの制作能力に長け、
同様のサービスを提供する従来のビジネスとは一線を画するその事業モデルは、
NHKの受信料以外の課金をことごとく拒んできたこの国のテレビを、
従来とは異なる情報デバイスに変身させることができるのか…?
tv
来年あたりには、「ネットフリックスの秋」と呼ばれるようになるのかなー…
などと考えながら、そのご活躍に期待を寄せたいと思います。
Nofuji.
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